僕が介護で重要だと思っていることについて書きたいと思います。
①寛容さ
認知機能が落ちた方々は、「普通に見れば変」だと思う行動をします。ですがそれを否定して、正しいことを教えようとしても上手くいかないことがほとんどです。
介護においては、「正しさを教える」ことは間違っていると思います。介護は教育やしつけではありません。
認知症の方の行動は、本人にしてみれば、間違っていないものです。その行動が「普通」だと考えてもいいです。
実際、僕らが「普通に」生活していて、他人がこうしなさいああしなさい、こうした方が正しいと、いきなり介入してくることは、不愉快なことでしかないと思います。それと同じことをしていると、介護者は自覚するべきです。
まずはその方の行動を受け入れます。例えどんなに変わったことで、不潔なことであってもです。もちろん危険性があれば素早く行動することが求められますが、ベースにあるのはその方の行動を受け入れて、どうしてそういう行動をしようとしたのか想像することだと思います。
②冷静さ
寛容さで相手の行動を受け入れた後は、冷静に対応しなければなりません。
なぜ冷静さを強調する必要があるのかというと、やはり認知症の方の行動は、こちらからしてみれば突拍子もないものが多いからです。慌てたり、声を荒げたりしないように、予め心構えをしておきます。
相手の感情や行動に引きずられることなく、平穏な状態を目指します。
危険がなければ、見守りをすることが一番良いでしょう。相手の行動をコントロールしようとするのは、介護においては上手くいきません。
冷静に、ゆっくり行動することを意識すると上手くいきやすい気がしています。
ただし危険なことであれば相手の感情を汲んでいる時間はありません。まずは安全な状態にして、それから落ち着いていただきます。
③優しさ
最後に優しさが重要になるのかなと思います。
僕は最初、優しさだけが介護の全てだと思っていました。優しい人のなる職業なんだと想像していました。
確かに、優しさ、思いやりは重要です。相手は一人のお年寄りで、人生の先輩だと敬い、優しく対応することは当然です。
ですが、過度な優しさは、介護にとってはマイナスとなることもあります。
相手のできることを先にやってしまう、相手が怪我をしないように過剰に介入する、相手の言われるがままに周りのことを全てやってしまう、などです。結果としてその人のできることを減らしてしまうことは、良い介護とはいえません。例えそれが優しさに基づいた行動だとしてもです。
僕が介護を始めた頃、「介護はちやほやするのが仕事じゃない」と注意されたことがありました。当時はその意味が今ひとつピンときませんでしたが、今は適切な助言だったのだと納得できます。