介護でなぜ寛容さが重要なのか理由を三つ述べます。
認知症の方に正しいことを教えようとしても上手くいかないため
認知症の方に正しいことを教えようとしても上手くいきません。むしろ状況が悪化することがほとんどです。
認知症の方は自分の中に正しさを持っていると感じます。別に認知症の方だけがそうではなく、僕たちも自分の中に常識や道徳といった正しさを持っています。その正しさを前提に行動しています。
認知症の方の行動は、その方の視点に立ってみれば、完全に正しいものです。僕たちも普通に生活している中で、それは違う、こうした方がいい、といきなり指摘されたら、誰だって素直に従いたくはないでしょう。これは例え話ではなく、実際に認知症の方にしてみればそういうことをされているのだと理解する必要があります。
介護を安全に行うためにも、結局は、寛容な気持ちで相手の行動を尊重することが一番良いです。
相手の気持ちを尊重するため
そもそも認知症云々にかかわらず、自分よりも遙かに年上の方に、あれこれ指摘するということ自体があまり良いことではないと個人的には思います。
誰だって自分のやりたいことがあります。生活の中でこうしたいという想いがあります。年を取っていても若くても、病気があっても、誰だって同じです。
私とあなたは違う。そのあたりまえのことを、介護においても前提にする必要があります。
自分とは全く違う人生を歩んできた高齢者の方に対して、こちらの正しさを一方的に押しつけて従わせようとするのは褒められることではありません。
自分の心を守るため
寛容さが足りないと、ストレスが溜まります。自分の思い通りに周りが動いてくれないことに怒りの感情を覚えてしまうからです。
介護は様々な高齢者の方と接します。中には認知症の症状で、感情が安定せず、こちらに暴言や暴力を振るってくる方もいます。それをまともに否定していたら心が保ちません。
相手は認知症の患者さんで、認知症の症状としてそうなっているのだと理解して受け入れることで、ストレスが軽減されます。
寛容さは相手のためでもあり、自分を守るためにも必要です。