車椅子などに移乗する際にやりやすい方法を紹介します。
今回の想定としては、認知症が進み理解力が低下している、また自力で立ち上がることができずに移乗の際には介助者の力で大半の移乗を行っている、というものです。
良い移乗の方法は相手も楽ですし、こちらの体の負担も少なく済みます
・移動する先へ九十度に位置取る。
・移乗される本人に協力してもらい、一緒に力を入れる。
・前傾姿勢を取ってお尻の圧力を取る。
・移乗される本人とタイミングを合わせて力を入れるために、コミュニケーションが大切。
移乗する場所へ九十度を意識する
車椅子やベッドの移乗の際には、まっすぐ向けるのではなく九十度、つまり直角に位置取った方がやりやすいです。
またベッド横に手すりを設置したりして、車椅子の方が立ち上がる前に掴めるようにしておくと、介助者一人の力で移動しなくても済みます。
イメージとしては、九十度の円弧を描くように、滑るようにして移乗します。もちろん移乗される方が投げ出されるような形にならないよう、ゆっくりと行うことが重要です。
移乗される本人にも協力してもらう
ベッド横やトイレなどに手すりが設置してある場合は、なるべく移乗される方にもそれらを掴んでもらうようにします。
掴んでもらった上で、こちらからかけ声をするなどしてタイミングを合わせ、同時に力を入れて移乗します。そうするとこちらの労力も減りますし、介助される本人にとっても快適になります。
認知症などで理解力が低下しており、難しいこともあるかもしれませんが、完全に介助者一人の力で移乗するのと、本人に協力してもらうのでは労力がかなり違います。手すりなどを示し、手を引いたりして、可能な限り手すりなどを掴んでもらうことをおすすめします。
手すりがなくとも、介護施設であれば、椅子を一つ置いておいて、手すりの代わりとして利用することもあります。ベストな方法ではありませんが、何もないよりはずっと良いです。
移乗の際には介助者も腰などを痛めやすいので、なるべく本人の協力を得ることを目指します。
前傾姿勢を取ってもらう
完全に背もたれに体重が掛かっている状態で移乗するのは、介助者にも本人にも負担が掛かります。
移乗のタイミングでコミュニケーションを取り、前傾姿勢を取ってもらい、お尻の圧力を取ることが重要です。
自分自身の動きを振り返ってみると分かるのですが、立ち上がるときは前の方に体重を掛けると思います。それと同じで、車椅子からベッドなどへの移乗の際にも、タイミングを合わせて前に重心を移してもらうと楽に移乗ができます。
コミュニケーションが大切
介助者と移乗される本人でタイミングを合わせることができれば、自力で立ち上がることができないほど足が弱った方であっても、それほど労力を掛けずに移乗することができます。
特に仕事で介護に携わっていると、本人の了解を得ないで、介助者一人のタイミングで移乗しようとしている職員を見かけることがあります。しかしそれは介助者と介助される本人の双方にとって負担の大きいやり方です。
例え認知症でコミュニケーションが難しくとも、少なくとも「これから移動するからタイミングを合わせて力を入れてくださいね」くらいの意思疎通はするべきです。相手にとって良い介護が、結果的に自分の労力を減らすことに繋がります。