時々ではありますが、介護サービスを利用していることが悪いことであるかのような雰囲気のご家族と会うことがあります。おそらくは認知症の親を施設に預けて自分が楽になっている、逃げなのではないか、といった罪悪感があるのではないかと思います。
個人的には、そのようなマイナスの気持ちになる必要は全くないと思います。むしろ加齢の問題で困っている全ての人に、介護サービスを利用してほしいと思っています。
介護施設は、お金を払って利用するサービスの一つである
大前提として、介護施設はお金を払って利用するサービス業です。
体調が悪くて病院に行くことを、逃げだという人はいません。困っていることがあって、それを解決するために、お金を払ってサービスを利用する。介護施設の利用もそれと同じです。
生活の問題は家族だけで解決しなければいけない、という決まりはない
割り切れないのは、自分の親や身近な人を、他人に押しつけてしまうような形になるからだと思います。今まで家庭内の介護で苦しんできた、その苦しみを他人に押しつけてしまって自分は楽になるのはどうなのか、そもそも今まで世話になってきた親を施設に入れてしまうのは薄情ではないのか、そういう感情になるのだと思います。
ただ、家族の問題だからといって家族だけで解決しなければならない、という決まりはありません。
事実として、加齢に関連する問題を解決するために、国や市がいろいろな施設や仕組みを整備しています。大勢の力を合わせて解決するべき問題だと、みんなが判断したということです。
親の人生と、自分の人生である
当たり前のことですが、親はあなたではありません。親の人生は、あなたの人生ではありません。
親の人生の犠牲になる必要はないと思います。あなた自身も苦しいし、親との最後の記憶を、苦しいもので終わらせてしまうのは寂しいです。
かつては、親は親の生活、あなたはあなたの生活というふうに、分かれていたと思います。
介護サービスは、それを取り戻す手助けをします。
介護施設では、サービスの計画を立てるとき、介護計画ではなく支援計画という言葉を使います。入居してきた高齢者が、できない部分を手伝う、できている部分を失わせないようにする、そういったアプローチです。
結局のところ、介護サービスというのは、生活のお手伝いなのです。介護サービスを利用するというのは、お金を払って、その人の生活の中でできない部分をお手伝いするということです。
認知症は、現在のところ、治ることのない病気です。終わりの見えない状況で、家族だけで介護し続けるのは無理があります。それは僕が実際に認知症の方々と接してきて抱いた率直な感想です。
まずは相談することが重要です。最初の相談先としては、地域包括支援センターが良いと思います。